これから3回目のワクチン接種を考えているけど、実際にどんな症状が、どのくらいの頻度で、どのくらいの期間続くんだろう?そして、ファイザーとモデルでの違いなど。。。このような疑問や不安が増えています。
そこで今回、最新情報をもとにワクチン副反応による不快な症状を和らげる対処法もあわせてご紹介します。
※)本記事は、「ワクチン副反応と対処法」というテーマの第四弾(最新版:2022年2月版)です。
4回目となる本記事は、前回(第5波:(8月26日付記事))のアップデート版として、2022年1月30日時点までの最新情報をベースに、 第一回目からの記事内容を含んだ「総まとめ記事」的に書き起こしています。
オミクロン株が優位になったの?
先ず、新型コロナウイルスの進化の状況を見てみます。
新型コロナウイルスのゲノム分析による系統発生と株の分岐群を追跡しているGISAIDによると、2022年1月30日時点における日本国内の状況は、オミクロン株が94%、従来のデルタ株が6%となっています。
一方、世界全体ではオミクロン株が85%、デルタ株が15%となっています。
ゲノム分析の履歴からみると、2021年5月に優位だったアルファ株は、3ケ月後にデルタ株に置き換わり、さらに、その3ケ月後にはデルタ株からオミクロン株に置き換わりはじめた。ということが分かります。
しかし、世界ではまだ15%もデルタ株が存在し、日本では6%も存在しています。わずか6%という数字ですが、1月30日時点の新規感染者数の週平均人数は75,000人/日ですから、その6%である1日当たり4,500人相当はデルタ株という状況です。つまり、デルタ株が猛威を奮った第5波の始まり(2021年7月26日)と同じ水準ですので、まだまだ気を付ける必要がありそうです。
最新版:ワクチンの有効性の推定値
従来からのインフルエンザのワクチンも、新型コロナウイルスのワクチンも、その目的は「重症化を予防する」ことです。
一方、新型コロナウイルス・ワクチンにおいては、「感染の予防効果」も測定されています。
世界6か国の公的機関10カ所の研究所のデータをまとめたワシントン大学の調査レポート(2022年1月10日)からまとめると、予防効果の推定値は次の通りです。
重症の予防効果 デルタ株 | 重症の予防効果 オミクロン株 | 感染の予防効果 デルタ株 | 感染の予防効果 オミクロン株 | |
ファイザー | 95% | 72% | 84% | 44% |
モデルナ | 97% | 73% | 91% | 48% |
アストラゼネカ | 94% | 71% | 69% | 36% |
Johnson & Johnson | 76% | 57% | 64% | 33% |
Sputnik-V | 89% | 67% | 85% | 44% |
Novavax | 86% | 65% | 82% | 43% |
CoronaVac | 49% | 37% | 46% | 24% |
Sinopharm | 71% | 53% | 67% | 35% |
Tianjin CanSino | 64% | 48% | 61% | 32% |
Covaxin | 76% | 57% | 72% | 38% |
従来のインフルエンザの重症予防効果は70%~90%ですので、日本で接種可能なファイザーとモデルナともに72%~97%の予防効果が測定されています。
ワクチン接種、ファイザーとモデルナ、どっち?
ワクチンを接種するのに、ファイザーとモデルナ、どっちがいいんだろう?その決め手は、次の
どちらですか?
・ワクチンの「予防効果」を優先する
・ワクチンの「副反応が少ないほう」を優先する
2つとも優先したいところですが、基礎疾患がある方やご年齢など、優先するポイントはどちらも接種する人の個人差によって大きく異なります。実際には、最新のエビデンスを見て、最適なものを選ぶ必要があります。
選ぶポイント
それでは、選ぶ際のポイント「効果」と「副反応」という2つ視点で、最新のエビデンスを元に紹介していきます。
ワクチンの効果について
上の「表1:ワクチン 予防効果の比較」を見ると、ファイザーとモデルナでの比較では、「重症化を予防する効果」および「感染を予防する効果」ともにモデルナが優位な結果となっています。
ワクチンの副反応について
では次に、ワクチン接種による副反応について、どんな症状が、どのくらいの頻度で、どのくらい続くんだろう。。。そんな視点で、次の表にまとめてみました。
副反応の種類と症状が出る割合
先ず、副反応の種類と症状が出る割合をみてみます。ファイザーおよびモデルナともに1回目、2回目、3回目にも副反応がありますが、両ワクチンともに2回目そして3回目の接種での副反応が出やすくなっています。
ワクチンの副反応 | 1回目の接種 | 2回目と3回目の接種 |
注射した部位の痛み | 80.5% | 87.8% |
筋肉や関節の痛み | 21.9% | 78.0% |
倦怠感 | 19.5% | 56.1% |
頭痛 | 14.6% | 26.8% |
寒気 | 12.2% | 36.6% |
発熱 | 4.9% | 14.6% |
発汗 | 0.0% | 4.8% |
症状無し | 7.3% | 2.4% |
年齢別:副反応の種類と症状が出る割合
しかし、これらの副反応は、ファイザー、モデルナともに、性別・年齢で異なります。あなたや、ご家族に当てはめてみてください。
発症時間:副反応の種類と症状
では、副反応はどのくらい続くのか?は下表のとおりです。3回目の接種でも2回目と同じ発症時間が計測されています。
例えば「筋肉や関節の痛み」の副反応では、ワクチン接種後1時間で反応が出る人もいれば、「倦怠感」の例では、最大で144時間も続く人がいます。
注射を打った後に注意すべき点、接種部の痛み(疼痛)、「モデルナアーム」と呼ばれる症状などについては、当ブログの第1回目、第2回目のそれぞれの記事をご参照ください。
なお、具体的な症状や、12歳~18歳の方々の副反応など、より詳細な情報をお知りになりたい方は、電子書籍(無料版あり)をご覧ください。
日本国内:2回目と3回目のワクチン接種による副反応の比較
首相官邸HPによると、3回目のワクチン接種状況は5.9%という低い割合のため、3回目の副反応についてはまだまだ数字が変わる可能性がありますが、1月30日の時点での2回目と3回目の比較をまとめると次の通りです。
ファイザー (2回目) | モデルナ (2回目) | ファイザー (3回目) | モデルナ (3回目) | |
接種部の痛み | 78.3% | 88.3% | 83.0% | 83.8% |
頭痛 | 54.0% | 58.8% | 48.4% | 55.1% |
発熱(38度以上) | 16.4% | 15.5% | 8.7% | 6.6% |
リンパ節症 | 0.4% | 14.2% | 5.2% | 20.4% |
【注意】3回目接種における「リンパ節」の発現割合が増えています(ファイザー5.2%、モデルナ20.4%)。日本国内では、3回目接種数が少ないため、まだまだアップデートされることと思いますので、引き続き厚生労働省のHPや首相官邸HPをご参考ください。
【アップデート】ファイザー社から米国FDAに通知した資料によると、ファイザー社による「リンパ節の腫れ」は、発症する場合、接種してから4日以内に発症することが分かりました。
混合接種による副反応
もう一つの大きな悩みは、「混合接種による副反応」ではないでしょうか?
例えば、
タイプA. 1回目:ファイザー、2回目:ファイザー、3回目:モデルナの場合の副反応
タイプB. 1回目:モデルナ、2回目:モデルナ、3回目:ファイザーの場合の副反応
医学誌medRxivによると、各研究所から次のデータが報告されています。上記のタイプ別にまとめてみたのが次のグラフです。
グラフ1:タイプA-3回目がモデルナの場合
タイプA. 1回目:ファイザー、2回目:ファイザー、3回目:モデルナの場合(頻度が高い順)
- 倦怠感・疲労感
- 接種部位の痛み
- 筋肉痛
- 寒気
- 頭痛
- 発熱
- 関節痛
- 吐き気
- 紅斑・赤み
- リンパ節の腫れ
グラフ2:タイプB-3回目がファイザーの場合
タイプB. 1回目:モデルナ、2回目:モデルナ、3回目:ファイザーの場合の副反応(高頻度順)
- 接種部位の痛み
- 倦怠感・疲労感
- 筋肉痛
- 頭痛
- 寒気
- 吐き気
- 筋肉痛
- 赤み
- 腫れ
- 発熱
おススメの対処法
実際にワクチン接種を受ける身としては、できるだけ痛みや症状を避けたいし、和らげたい!というのが本音です。
ワクチンは人間の免疫系との相互作用なので、頭痛・発熱・倦怠感の他にも、動悸や胃の不快感、不眠が出るなど個人差によって異なります。
そして、「免疫力が高い方」や「若い方」が副反応が強く表れます。
選択肢としては、症状が出てから服用する「西洋薬」か?、事前に症状を和らげるために服用する「漢方薬」か?となりますが「漢方薬」がおススメです。
漢方薬をおススメする理由としては、
① 西洋薬は接種前の服用が推奨されていないこと。
② 西洋薬との服用も併用可能であること。
ということから漢方薬をおススメします。
おススメの西洋薬
おススメの漢方薬は後述しますが、「西洋薬」の場合は、妊娠時の方やお子様にも安心な「カロナール」がおススメです。しかし、痛みが強い場合、カロナールは鎮痛効果が弱いため、鎮痛効果が高いアスピリン、ロキソプロフェン、イブプロフェインなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を含む解熱鎮痛剤もご検討ください。
ただし、これらのNSAIDsには胃腸障害などの副作用があるため、同時に胃腸薬を処方されるケースが多いので、服用される場合は薬剤師あるいはかかりつけ医に相談してください。
おススメの漢方薬
ワクチン副反応の症状を和らげる「葛根湯」
これまで見てきた通り、3回目のワクチン接種では部位の痛みや筋肉痛の頻度が高い可能性があります。そのため、「葛根湯」だけでも飲んでおいたほうが、筋肉痛や発熱・頭痛がしづらいです。接種当日とその次の日まで、飲むことをおススメします。接種した側の肩がダルく、重くなる感じも和らぎます。
「葛根湯」を服用しても熱が下がらないな~、痛みが取れないな~という場合に、アセトアミノフェン(カロナール)を服用してください(同時服用となっても問題ありません)。
なお、葛根湯も製薬メーカーによって生薬の量や配分が異なります。日頃より服用されているものや、薬剤師またはかかりつけ医にご相談の上ご利用ください。
一般的な用量の葛根湯はドラッグストアでもよく見かけますが、お子様から高齢者まで幅広く服用ででき、おススメの用量が入っている商品例はコチラです。
倦怠感が続く場合には「補中益気湯」
3回目の接種で、倦怠感が強くでた場合には「補中益気湯(ホチュウエッキトウ)」がおススメです。
疲労倦怠など元気がなく、胃腸の働きが衰えている時に効果があります。
補中益気湯も製薬メーカーによって生薬の量や配分が異なります。日頃より服用されているものや、薬剤師またはかかりつけ医にご相談の上ご利用ください。
参考文献
※)以下のサイトには、医療関係者向けなど閲覧制限があるものが含まれています。そのため、状況によってはアクセスできない場合がありますこと予めご了承ください。
Pfizer/BioNTech
www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2034577
www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140‐6736(21)00448‐7/fulltext
www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2101765
papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3790399
www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.01.27.21250612v1
Moderna
www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2035389
Oxford‐AstraZeneca
www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140‐6736(20)32661‐1/fulltext
www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140‐6736(21)00432‐3/fulltext
papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3779160
Johnson & Johnson
www.fda.gov/media/146218/download
www.fda.gov/media/146217/download
www.fda.gov/media/146219/download
Novavax
ir.novavax.com/static‐files/2f6f14cb‐3205‐4719‐b28c‐1711793b9782
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2103055
Sputnik V
www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140‐6736(21)00234‐8/fulltext
CoronaVac
www.nature.com/articles/d41586‐021‐00094‐z
Sinopharm
CanSinoBio
厚生労働省
【資料4①】変異株の対応 (mhlw.go.jp)
その他主要データ
- https://ourworldindata.org/covid-vaccinations?country=JPN
- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_kenkoujoukyoutyousa.html
- https://www.juntendo.ac.jp/jcrtc/about/results-of-activity/COVID19/covidresearch.html
- https://www.juntendo.ac.jp/jcrtc/albums/abm.php?f=abm00036097.pdf&n=%E9%A0%86%E5%A4%A9%E5%A0%82HP%E6%8E%B2%E8%BC%89%E7%94%A80623_FIX%E7%89%88.pdf
- https://www.jspm.ne.jp/guidelines/pain/2010/chapter02/02_04_02_01.php
- https://doi.org/10.1038/s41586-021-03738-2
- https://ijvtpr.com/index.php/IJVTPR